「優しさの裏にある恐怖

入隊を前にした航空学生が感じる不安と緊張、先の見えない道を象徴する空と一直線の道 航空学生時代

優しさの裏にあった、逃げ場のない恐怖

入隊のため、防府北基地に到着した。

基地に足を踏み入れた瞬間、空気が一変したのを今でも覚えている。

言葉にするのは難しいが、

そこには 異様な緊張感 があった。

教官たちに挨拶をし、そのまま二年間生活することになる宿舎へ向かった。

そこにいたのが、これから共に生活する「先任期」の先輩たちだった。

第一印象は、意外なほど優しかった。

話し方も丁寧で、こちらを気遣うような態度。

しかし、直感的に思った。

――この人たちは、間違いなく怖い。

航空学生の生活は、

2年生である先任期と、1年生である後任期が同じ宿舎で生活する。

しかも、先任期は24時間体制で後任期を見ている存在だ。

なぜ最初は優しいのか。

それには理由がある。

着隊してから正式な入隊日までには、数日の猶予期間がある。

この期間中に辞めた場合、その人は自衛官ではなく、民間人として扱われる。

つまり、この期間は

「まだ戻れる時間」だった。

だからこそ、先輩たちは最初、あえて優しい。

だが、入隊日が近づくにつれて、

その空気は少しずつ、確実に変わっていった。

言葉が減る。

視線が増える。

笑顔が消える。

誰も何も言わないのに、

「もう逃げ場はない」と分かってしまう。

この無言のプレッシャーは、想像以上だった。

結果として、

入隊日を迎えるまでに、私たちの期別でも数人が辞めていった。

誰かがいなくなるたびに、

宿舎の空気はさらに重くなっていく。

そして入隊。

そこからの日々は、

想像するまでもなく、人生で経験したことのない過酷なものだった。

だがそれは、また別の話。

この時点ですでに、

「ここに残る」という選択そのものが、

一つの試練だったのだと思う。

次回予告

次回は、入隊後に始まった

「ミスが一切許されない生活」と、

精神的に追い詰められていく日常について書こうと思います。

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